2020年2月7日(金)からスタートする沖縄公演に先駆けて、全2回にわたりお送りしているスペシャル対談の後編です。(前編はコチラから)

演出家/富田めぐみ 氏、照明/金城悟 氏、音響/山口香織 氏に、クリエイティブチームならではの目線で「五月九月(ぐんぐぁちくんぐぁち)」の秘められたエピソードをたっぷりと語ってもらいます!

  

  

互いの信頼が生み出すクリエイティブの連鎖

  

富田めぐみ(以下 富田):「五月九月」は台本が台本じゃないんだよね。たたき台みたいなものだから、どういう風にでも膨らませられる。だから、これまでスタッフ・立方・地謡それぞれが持っている、オーガニックで精良な表現が作品の世界観を作ってきた。作品のイメージを上手に膨らますことができたのは、信頼している仲間たちと一緒だったからだと思う。

山口香織(以下 山口):本当にチームって感じですよね。

金城悟(以下 金城):うんうん。

富田:信頼し合っている仲間たちが力を出し合えてる環境だと感じていて、台本の“間”をみんなが満たしてくれた。私が(演出家として)指示を出したわけではなく、みんなと一緒にクリエイションした作品だなって感じているの。 金城:そうですね。

  

美しい月夜 登場人物のキャラクターが垣間見えるシーン
観客と舞台の距離もグッと縮まる

  

金城:たとえば照明も、めぐみさんに許可を取らないで、実際につけてみてから『こんな風にしたけど』って言ってみたり。

富田:そうそう、月夜のシーンとかね。もともと絵になるシーンにしたいなぁと思っていたけれど、私はパネルの並べ方とか置き位置くらいしか作っていなかった。そこに悟さんが月や星を出してくれて、初めて観た時は『あぁ、こんなキレイなシーンができたんだぁ』って。

金城:(照れ笑)。

富田:それに、少し変わった手の振りには、ものすごいこだわった照明を作ってくれたでしょう。あんなシーンは、伝統芸能のどこの流派にもない。でも振りは間違いなく伝統芸能で……そうやって、世界のどこにもないシーンを、みんなで生み出していった。

金城&山口:うんうん。

  

照明について静かに語る言葉の中には
信念と情熱が流れている

  

金城:照明は劇場に入ってからでないと分からないことも多いけど、稽古を見ながら頭の中で常にイメージをしておくようにしてるんです。めぐみさんから『パネル転換でバタバタしているシーンを見せたい』と言われたときも、『じゃあ照明もバタバタした方がいいかな』とか。

富田:普通は照明を落として、舞台の転換はなるべくお客様に見せないようにするものだけど、そのシーンは転換を見せるのが面白いと思っていたから。ただ私は『見せてね』としか悟さんには言ってなかった。悟さんが色々考えてくれて、照明として具現化してくれた。その結果、ますますバタバタしちゃってね。(笑)

金城:そう、照明もグルグル回したから。(笑)

  

劇中の1シーン1シーンが
アイデアと想いの積み重ねによって生まれている

  

富田:照明って、舞台の世界を作るものでもあり、時間を支配するものでもある。悟さんは、その呼吸を演者と合わせるのが、すごく上手いなぁって思っている。呼吸を合わせすぎて、演者が間違えたから、悟さんも間違えたことがあるくらい。(笑)

金城:それは……。(苦笑)

富田:いや、私は逆にスゴイなぁと。普段は全然間違えないのに、演者が大間違いをしたら、悟さんも同じくらいの大間違いをして(笑)。でも、そこまで一心同体で呼吸してるんだって感動したの。

金城:それまで「五月九月」は一度も失敗したことなかったのに、自分でも何でこんなミスをしたんだ……!って。

富田&山口:(笑)。

富田:私たちは“リアル五月九月”って呼んでいるけど、こうやって舞台裏でも色々なことが起こっていて。何とか舞台を成功させようと、みんなで努力するのは、まさに「五月九月」の世界観そのもの。琉球王朝時代の先人たちの汗を追体験してるような気がする。

  

苦労やアクシデントも力に変える
スタッフやキャストをポジティブにするパワーが この舞台にはあるようだ

  

“自分たちの作品”だからこその想い

  

富田:「五月九月」みたいなスタイルで創作を進めることって少ないでしょう。『新しいけど、伝統に基づいて』という信念をみんなと共有できたから、自由に創作できたんだと思う。伝統芸能にたずさわってる自分たちだからこそ出来る作品を創ってるっていう喜びがある。

金城:僕もめぐみさんから『新作やるよ』と話をもらったときから、すごく嬉しかったのを覚えています。台本を見ながら色々と考えて、自分たちの作品だという気持ちで一緒に作っていた。再演の機会も多くて、今でもやるたびに楽しいんです。

山口:うんうん。私もこんなの初めてなんですけど、「五月九月」は自分たちの作品だと思っているんです。だから、家でもよく作品の話をしますよ。今日の稽古も楽しかったねー!とか。

富田:嬉しい。ちょっと泣きそうかも。

  

金城氏・山口氏からは夫婦としてはもちろん
舞台にたずさわる者としてもお互いをリスペクトしていることが分かる

  

山口:それに2人(山口氏と金城氏)でお互いの仕事についてもダメ出しし合ったりするよね。

金城:うん。よくします。

富田:キャストの組合せで相乗効果が生まれるように、スタッフ同士でもハーモニーってあるからね。……(山口氏は)姉さん女房だから、悟さんには厳しいかも。(笑)

山口:(爆笑)

金城:ダメ出しされたときは、すぐ直しますよ。リハーサルが終わって『今日は角度が悪かったんじゃない?』とか言われたら『はい、すぐ直します!』って。(笑)

全員:(笑)

  

首里城の朱色をイメージしたというチラシ
対談の前日に完成したばかりだった

  

葛藤の先で生まれたもの

  

富田:あ、そうだ!今回の公演のチラシ出来上がったよ!

金城&山口:(チラシを手に取って)おぉー!

富田:なかなかの豪華キャストでしょう。舞台の見どころを分かりやすく解説してくれるプレトークには、嘉数道彦さんと鈴木耕太さんが出てくれる。久々の沖縄公演で、この忙しい中、スタッフもキャストもこれだけのメンバーが集まってくれた。

山口:このメンバーだったら、今回もすごく面白い舞台ができますね!

富田:「五月九月」は私にとっても特別な作品のひとつ。でも実は……『大好きな琉球芸能をいろいろな人たちに観て欲しい』という想いからスタートしたけど、伝統芸能自体の面白さが、思い通りに伝わらないもどかしさや手荒に扱われる怒りを感じてもいた。作品を作ることで、私たちが『伝統芸能は面白い!』と、みんなに証明するしかないと考えていた時期だったの。

  

スタッフ・キャスト・観客
その全てが「五月九月」という世界を作りだしている

  

富田:最初は必ずしもポジティブとは言えない想いも入っていた作品を、スタッフやキャストが純粋に『琉球芸能を愛する気持ち・舞台を愛する気持ち』で“ろ過”してくれた。みんなの気持ちが、この「五月九月」を本当にキレイなものとして生み出してくれて。そういうスタッフやキャストと一緒に舞台ができることがすごく嬉しいの。だからお客様にも、すごく自信をもって提供できる作品です!

金城:僕はめぐみさんと出会って一緒に舞台をやる中で、三線や踊りをひとつずつ覚えていって、楽しいなぁと感じるようになった。「五月九月」を観てくれる人も、そういう入り方をきっかけにして琉球芸能を好きになってくれたらいいな。

山口:私も「五月九月」をやってると、自分もウチナーンチュなんだなぁと思うことが多いんです。例えば三線の音を聴いていると、心に染みて『やっぱり好きだなぁ』と感じる。私は三線も踊りもできないけど、自分の音響でいろいろな人に琉球芸能を知ってもらいたいと思っています。

富田:「五月九月」という作品はキャスト・スタッフ・お客様みんなのものだと思っている。お客様の拍手や笑い声があって完成する舞台だから、観に来てくださるお客様も“自分たちの作品”だと感じて、一緒に楽しんでいただけたら嬉しいです。

  

この島で先人たちが築き上げてきたものへの
尊敬と愛があふれる富田氏の言葉は印象的だった

  

制作過程の裏話や、作品にかける想い、面白エピソードなど盛りだくさんでお届けした、スペシャル対談企画。今回の対談は『沖縄の文化・芸能を通じて、首里城についてのポジティブなメッセージを届けたい』という演出家・富田めぐみ氏たっての希望から、昨年2019年10月に起きた火災によって大きく焼失した首里城を望む、沖縄県立芸術大学の一室で行われました。

スペシャル対談の最後は、富田氏が語ってくれた首里城への想い、そして沖縄の文化・芸能に対する想いを、皆さまにお届けします。

  


  

富田:どんな困難が起こっても、何度も立ち上がってきたのがウチナーンチュ。琉球國という国はなくなったけれど、当時の文化・芸能が今も受け継がれていることで、令和の時代になっても私たちは琉球國を感じることができる。

首里城が再建されるまでには時間がかかるけれど、これまでも首里城は何度も炎に包まれたけど、何度も蘇った。「五月九月」みたいな首里城を舞台にした作品をやることで、心の中の首里城を強くイメージできるのかなって思うんです。

首里城で生まれた文化は、先人たち、そして今日まで繋いできた一人一人の汗と涙の結晶です。美しく尊い宝物を、これからも大切にお客様へお届けするのが、私たちの使命だと感じています。これからも一層、精進していきたいと思います。

  


  

  

対談した人

  

富田めぐみ|とみた めぐみ

演出家/司会者/コーディネーター/ラジオパーソナリティー など多彩な顔を持つ。

琉球芸能をベースとした舞台を通して『沖縄と世界を繋ぐ』という志のもと、世界各国での舞台公演おこなう一方で、沖縄の人・地域と琉球芸能を繋ぐ活動にも積極的に取り組む。実演家たちと共に作り上げる、年齢・言葉・国を超えた親しみやすい舞台は、受け継がれてきた伝統に忠実でありながらも琉球芸能に新たな魅力を吹き込む作品として注目されている。世界中を飛び回りマルチに活躍する“琉球を愛する人”。

  

金城悟|きんじょう さとる

照明家/沖縄舞台 所属

照明との出会いは学生時代にアルバイトとして携わった有名アーティストのコンサート。照明技術に魅了され大学卒業後は沖縄舞台に所属する。国内外、舞台・イベントの種類を問わず、幅広く活躍する実力派の照明家。舞台「五月九月」の照明が評価され、2015年日本照明家協会賞 新人賞を受賞。妻は音響家の山口香織氏。

  

山口香織|やまぐち かおり

音響家/プロサウンドスタック所属

自身のバンド活動経験から、音響技術に興味を持ったことがきっかけで音響家を志す。現在はライブやコンサートイベント・現代演劇・伝統芸能など、舞台のジャンルを問わず活躍。舞台に立つ人、舞台を観る人の双方が“心地良い音響”を追求している。プライベートでは2児の母。夫は照明家の金城悟氏。

  

※記事内の写真はイメージです。公演日等によりキャストは異なりますのでご了承くださいませ。

  

  


  

五月九月|2019年度 沖縄県文化観光戦略推進事業

■公演スケジュール

2020年  2月 7日(金)19:00【完売御礼】

       8日(土)13:00/16:00

       9日(日)13:00/16:00

※会場は各日とも開演時間の30分前となります。

■会場

テンブスホール

 沖縄県那覇市牧志3-2-10 那覇市ぶんかテンブス館4F

■チケット料金(税込)

 一般:2,500円

 高校生以下:2,000円

 ※未就学児に限り膝上鑑賞無料

 ※プラス100円で座席指定可 →チケット購入はコチラから

  


  

五月九月STAFF

脚本・演出/富田めぐみ

脚本監修/嘉数道彦

振付・演出助手/呉屋かなめ

音楽監督/花城英樹

舞台監督/猪股孝之

筆文字あーと/田場珠翠

照明/金城悟(沖縄舞台)

音響/山口香織(プロサウンドスタック)