舞台「五月九月」スペシャル対談[前編]
“リアル五月九月”バックグラウンドストーリー
小雨の降る首里城を望む沖縄県立芸術大学にて
写真左より:富田めぐみ氏/山口香織氏/金城悟氏
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多彩なコンテンツで、沖縄の文化・芸能の魅力を皆さまにお届けしてきた『沖縄芸能DAYS 2019』の今年度公演も、いよいよ残すところ1つとなりました。ラストを飾るのは、極上の伝統芸能×コメディが生み出す大好評の舞台「五月九月(ぐんぐぁちくんぐぁち)」です。
2020年2月7日(金)からスタートする沖縄公演に先駆けて、今回から全2回にわたりお送りするスペシャル企画。舞台制作や稽古の様子など、普段はなかなか見ることのできない「五月九月」の舞台裏について、演出家/富田めぐみ 氏、照明/金城悟 氏、音響/山口香織 氏にたっぷりと語ってもらいます!
ファン待望の沖縄公演
富田めぐみ(以下 富田):これまで色々な作品を作ってきたけれど、「五月九月」ほど『次いつやるの?』と聞いてもらえる作品はないかもしれない。今回の沖縄公演も、皆さん楽しみに待っていてくれたようで、とっても嬉しくて。
山口香織(以下 山口):私も楽しみ!
富田:2人(山口氏・金城氏)とは、なんやかんや色々な舞台を一緒にやってるよね。実は「五月九月」は最初に台本を書いているときから、照明と音響は2人にお願いしようって決めてたの。
山口:最初に「五月九月」の台本もらった時って、どんな感じだったかな?
金城悟(以下 金城):めぐみさんから台本をもらった時は、(山口氏と)2人で『面白い!』って話していたよね。初めて稽古場に行ったのは、(初演の)本番1カ月前くらいだったんだけど、まだ全然……(笑)。
富田:ふふふ(笑)。出来上がってなかったんだよね。
金城:「五月九月」は、流派の違う人たちが集まってひとつの踊りを踊るから、そこはすごく時間を掛けて作っていましたよね。
富田:そうそう。たしかフィナーレは本番の前日に初めて稽古したはず(笑)。
金城:そうですね(笑)。
富田:新作だから稽古にはものすごく時間が掛かるにも関わらず、『この人たちじゃなきゃ出来ない!』というキャストとスタッフにお願いをしていたから。最初から忙しいことは分かっていて、深夜の稽古を繰り返してた。……それでも出来なくて本当にギリギリで。
山口:でも、そういう時って『早くやらないと』ってピリピリするのが普通なのに、稽古はすごく面白かったですよね。
富田:香織さんが稽古場で爆笑していたの、すごく覚えてる(笑)。
山口:今まで見たことない感じで、お稽古から本当に面白くて。何これ天才!なんじゃこれ!って(笑)。
富田:(笑)。みんな大変だったのに、全然“悲壮感”もなくて『面白いから大丈夫』みたいな空気があったよね。
山口:うんうん。
信頼で結ばれた3人の温かい関係
富田:悟さんと香織さん、夫婦一緒に仕事をお願いするのは「五月九月」が初めてだったでしょう?すごく嬉しかったのは、公演を続けていく中で2人に第2子が生まれたことなの。産前の最後の仕事が「五月九月」で、産後の最初の仕事が「五月九月」だったんだよね。
山口:明日から産休っていう時までやって……
富田:もともと「五月九月」の舞台は信頼ある人と作りたかったし、2人セットでお願いした方が楽しいだろうなぁってうのはあったんだけど。何だか、家族全員で関わってくれている気がして。それが余計に嬉しくて。
山口:私も、めぐみさんとの仕事は面白いから、自分から積極的に参加したくなるんですよ。ちょっと遊んで、面白いことをやりたくなる。(笑)
山口:めぐみさんって厳しいところは厳しいけど……抜けているところも相当ありますよね。だから(一緒にいても)すっごく面白い。
金城:相当って。(笑)
富田:(笑)。
山口:あ、でも怒っている時は怖いかも?(笑)
富田:ちゃんと出来るのにやらない人には怖いの。『それだけ!?出し惜しみしないっ!』みたいなね。
金城:僕は怖くはないけど、めぐみさんとの仕事はやっぱり緊張はするかな。めぐみさんは、すごく“こだわる人”だから、事前に台本見て、話は聞いていても、現場で一発目の照明を出すまでは『大丈夫かなぁ』って思っている。でも、それが楽しい。
山口:うんうん。だから、めぐみさんに怖い印象はないですよ。(笑)
金城:うん。
富田:おぉ。この部分、絶対に記事に書いてもらおう!『怖くない』って、なかなか言われないから!
全員:(笑)
“好き”から生まれる舞台
金城:照明の仕事は、出ている役者さんや踊り手さんをキレイに見せること。でも、どこかに自分の好きな色を入れたり、好きな手を入れたり、自分も楽しんでやることを大事にしたいから、僕は携わる作品を好きになって愛情を持ってやりたいと思っているんです。だから思い入れのある「五月九月」を、またこうして公演できることが嬉しいんです。
山口:あ、それは私も同じかも。この作品が好きだって気持ちがあると全然違う。
金城:そうだよね。
山口:そういう意味では、「五月九月」は前のめりすぎて、必要以上にエフェクトを入れたくなっちゃうかな。それで、めぐみさんに『それはナシで』って言われることもある。(笑)
富田:でも香織さんは、私の好みをちゃんと分かってくれるでしょう。たとえば、私は伝統芸能の部分は、あまり音を加工するのが好きじゃない。だからいつも、すごくキレイで真っ直ぐな音を出してくれる。で、ほかの部分で遊ぶみたいな。
山口:伝統芸能の舞台ではあまりやらない、変なエフェクト入れたりして。(笑)
富田:しっかりした伝統芸能をやる舞台なのに。(笑)
富田:でも、稽古を見ている2人が『はい!はい!』ってアイデアをあげてくれたから、そこから台本にはないシーンがたくさん生まれた。
山口:自分から『こうやりたい』ってあれこれ言うのは、この舞台で初めて経験したかも。
富田:香織 さん が何かやってくれると地謡(じかた|演奏する楽師のこと。じうたい/じうてーともいう)が喜んで、悟さんが何かやってくれると立方(たちかた|演者のこと)も『おぉ!』ってなる。その掛け合いが本当に面白かったし、自分たちがどこにもない形を生み出したって想いが強くなったよね。
金城&山口:うんうん!
富田:そうやってスタッフが、立方が、地謡が、自分たちで『あーでもない、こーでもない』ってやりながら、出来上がった舞台が「五月九月」なんだよね……作品を作っていく過程は、なんだか本当に魔法みたいだった———
スペシャル対談企画 後編へ続く (2/6公開予定)
笑顔の絶えない和やかな対談は、とってもアットホームな雰囲気。それは、3人のお人柄だけでなく、共に苦労した思い出や築いてきた信頼があるからなのかもしれません。
スペシャル対談企画の後編は、クリエイティブチームとして舞台制作に携わる3人だからこそ知っている「五月九月」の舞台裏をさらに掘り下げて語っていただきます。
アイデアが飛び交う制作過程の様子や、プロとしての仕事にかける想いなども、たっぷりとお届けします。お楽しみに!
対談した人
富田めぐみ|とみた めぐみ
演出家/司会者/コーディネーター/ラジオパーソナリティー など多彩な顔を持つ。
琉球芸能をベースとした舞台を通して『沖縄と世界を繋ぐ』という志のもと、世界各国での舞台公演おこなう一方で、沖縄の人・地域と琉球芸能を繋ぐ活動にも積極的に取り組む。実演家たちと共に作り上げる、年齢・言葉・国を超えた親しみやすい舞台は、受け継がれてきた伝統に忠実でありながらも琉球芸能に新たな魅力を吹き込む作品として注目されている。世界中を飛び回りマルチに活躍する“琉球を愛する人”。
金城悟|きんじょう さとる
照明家/沖縄舞台 所属
照明との出会いは学生時代にアルバイトとして携わった有名アーティストのコンサート。照明技術に魅了され大学卒業後は沖縄舞台に所属する。国内外、舞台・イベントの種類を問わず、幅広く活躍する実力派の照明家。舞台「五月九月」の照明が評価され、2015年日本照明家協会賞 新人賞を受賞。妻は音響家の山口香織氏。
山口香織|やまぐち かおり
音響家/プロサウンドスタック所属
自身のバンド活動経験から、音響技術に興味を持ったことがきっかけで音響家を志す。現在はライブやコンサートイベント・現代演劇・伝統芸能など、舞台のジャンルを問わず活躍。舞台に立つ人、舞台を観る人の双方が“心地良い音響”を追求している。プライベートでは2児の母。夫は照明家の金城悟氏。
※記事内の公演写真はイメージです。公演日等によりキャストは異なりますのでご了承くださいませ。
祝!令和元年度(第74回)
文化庁芸術祭 大賞受賞!
(大衆芸能部門)
五月九月(ぐんぐぁちくんぐぁち)|2019年度 沖縄県文化観光戦略推進事業
■公演スケジュール
2020年 2月 7日(金)19:00【完売御礼】
8日(土)13:00/16:00
9日(日)13:00/16:00
※会場は各日とも開演時間の30分前となります。
■会場
テンブスホール
沖縄県那覇市牧志3-2-10 那覇市ぶんかテンブス館4F
■チケット料金(税込)
一般:2,500円
高校生以下:2,000円
※未就学児に限り膝上鑑賞無料
※プラス100円で座席指定可 →チケット購入はコチラから
五月九月STAFF
脚本・演出/富田めぐみ
脚本監修/嘉数道彦
振付・演出助手/呉屋かなめ
音楽監督/花城英樹
舞台監督/猪股孝之
筆文字あーと/田場珠翠
照明/金城悟(沖縄舞台)
音響/山口香織(プロサウンドスタック)
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“リアル五月九月”バックグラウンドストーリー